東京大学のイノベーションスクール i.school に参加させて頂きました。

“Future of Manufacturing.”「マニュファクチャリングの未来」
Facilitators: Innovation Design Engineering Dept., Royal College of Art (RCA IDE)
(Miles Pennington, Nobuoki Ohtani, Simone Thompson, and Neil Anthony Barron)
5日間のワークショップで、デザインエンジニアリングのプロセスを用いながら未来のサステイナブルな製品デザインを行ないます。
ワークショップ参加者は約20名で、東京大学の学生、企業で働く社会人、千葉大学のデザイン専攻の学生等、様々なバックグラウンドをもつ方々が参加しています。
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<1日目>
・Reverse Engineering
・Act
・Breakdown
まず、RCA-IDEから来られた教授の方々の簡単な自己紹介とワークショップテーマの説明です。その後、参加者の自己紹介とチーム分けを行ないました。
僕のチームは、RCA-IDEから来た唯一の学生と東京大学の学生2名の計4名です。
今回ワークショップで紹介されたプロセスは、「Reverse Engineering, Disrupt Innovation」
Reverse Engineeringとは、機械を観察したり分解することでその製品構造を分析し、製品の仕組みや機能の理由を詳細に調査するという手法です。
始めの2日間は、このReverse Engineeringのプロセスを行ないます。
まず、それぞれのチームに既存の製品が与えられます。
与えられた製品は、掃除機/電話機/電気ポット/CDプレーヤー/ドライヤー/冷蔵庫/プリンター の7つ。
僕のチームは、電気ポットです。

イギリスでは、この保温式の電気ポットは無いらしく、電気ケトルがメジャーらしいです。
まず始めに、自分のチームの製品機能や要素を体だけを使って表現します。
みんな製品になった気持ちで演技をして、ワイワイ!
ブレイクとしても最初に演技するというの良いです。
その後、電気ポットを実際に使ってみたり、観察してワーワー言い合います。
そしていよいよ分解。

電気ポットは、比較的簡単に分解出来たのですが、部品数が思った以上に多いです。
細かな電子部品をのぞいても60パーツ以上はあります。
お湯を出す時に押す上面部分の構造は、空気圧を上手く使った面白く細かい構造でした。

空気の逆流を防ぐための金属の球や空気の出し入れの構造等、一見単純そうな機能を実現させるには複雑な構造が必要です。
この日は部品をバラバラにする所で作業終了。
<2日目>
・Reverse Engineering
・Top Trump Game
・Display
・Impact & Functional Analysis
この日の最初に、イギリスではメジャーらしきマテリアルの特性が書かれたトランプを使ってゲームをします。
マテリアルが環境に与える影響が低いカードほど強く、それぞれカードを1枚ずつ見せながら戦っていきます。日本のカードゲームに比べるとゲーム性はあまり無いのですが、マテリアルの特性を理解する上では面白いです。
その後、前日にバラバラにした部品を分かりやすくするためのディスプレイづくり。

よく海外のデザイン学生がスケッチやCGで書くような3次元の構造分解図をリアルで作ります。
段ボールを部品の形にくりぬいてパーツを埋め込みます。
パーツ数が多く作業はかなりハードでしたが、出来上がったのがこれ

時間をかけてつくった甲斐があります。ステキ。
そして、Reverse Engineeringによって感じた、その製品のImpactと機能の目的を明らかにします。
そして提案に繋がるコンセプトを決定。
<3日目>
・Disrupt Innovation
・Brainstorming
・Idea mapping
3日目と4日目は、Disrupt Innovation。
まずは、コンセプトに基づいたアイディアをたくさん出します。
質より量ということで、短い時間でラフスケッチを用いながらグラフィカルに表現します。
この時に、どんなアイディアでも決して否定しないことがポイントです。まだアイディアのかけらなので、突っ込みどころ満載のクレイジーアイディアが推奨されます。
そのアイディアを、IMPACT・INNOVATIONの2軸にマッピング。この辺は少し主観的ですが、アイディアの関係性を見るという役割もあると思います。

IMAPCTとINNOVATION軸が高いブロックのアイディアを多く出すようにさらにアイディア出し。
<4日目>
・Spider Map
・Concept Development
・Concept Freeze
アイディアをいくつかピックアップし、コンセプトの重要な要素となる8つのキーワードを抽出。
僕のチームは、Ease of use / Innovation /Pleasure / Speed / Sustainable / Not complexity / Low cost / Lifetime の8つです。
このキーワードを8軸でスパイダーマップを作ります。
そのマップで、気になるアイディアを分析します。
軸のキーワードの値がどのくらいなのかを1つ1つのアイディアをピックアップしてマッピング。

これによってアイディアを客観的に見たり他のアイディアと数量的に比較できます。
それらを見ながら、8軸の数値がすべて高くなるようにアイディアをブラッシュアップします。
<5日目>
・Presentation
・Discussion
プレゼンへ向けての素材作り。
前日にアイディアは決まったものの、具体的な提案やプレゼン作業があまりできていなかったので、朝早く集合。
メンバーの一人が良い資料を見つけてくれて、アイディアの実現性も高まります。
製品の構造やパッケージ、ブランドネーム等、製品としての完成度を高めることも重要とされています。
また、その製品がもたらすストーリーも重要です。
ぎりぎりまでばたばたして、プレゼン時間までになんとか完了。
そして、各チーム発表です。

それぞれのチーム、製品の構造や使用シーンの実演など面白いアイディアがいっぱいでした。
そして我がチームは…
化学反応による発熱を利用した加熱ボール。通称「Hurry Hotter」です。
もちろんイギリス意識です。
水が入ったカップの中に加熱ボールを入れるだけで、水が高温になり、紅茶やコーヒーが入れられるというもの。
また使用後のボールは土の肥料となるため、庭のガーデニングに最適です。
アウトドアなんかにもおすすめです。
そして発表が終わり、講師の方々が偽の札束を取り出して、良いアイディアに対して投資をします。マネーの虎です。
こういうやり方が RCAの先生はとても上手いです。
そして、なんと我がチーム1位でした。
みんなで、昼ご飯を食べずに頑張った甲斐があります。
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このワークショップを通していろいろなことを感じました。
まずは、「多様性」について。
僕のチームは、海外の学生もいたり、バックグラウンドが、デザイン・建築・エンジニアリングと様々な価値観を持った学生が混在していました。
その中で、すべて英語での議論を行い、アイディアを練っていきます。
英語で議論をすすめていくのは大変でした。
でも、それが結果としてとても良かったのではと思います。
チームでのグループワークは、価値観を1つに統一することを目的として議論を進めがちです。
例えば、1つのアイディアに対して反論があった場合に、それをいかに説得するのかを目的に議論を進めるように。
おそらく、チームメンバーそれぞれが持つ価値観はみんな異なっていると思います。
議論をしながら、1つの価値観に統一することは難しく、また結果としてありふれた価値観に立ち戻ってしまうこともあると思います。
今回のチームでは、英語での難しいコミュニケーションというフィルターを通して、価値観の統一があまり出来なかったことがとても良かったのではと思います。
もちろん意見が割れたままぎくしゃくして進めていたのではなく、それぞれの持つ本当の価値観は各々持ちながら、1つのアイディアにそれぞれの価値観を集約したような感じです。
あくまでも僕の感じたことなので、人によって様々な感じ方があると思いますが、価値観を統一しないようにと考えるととてもやりやすいのではと感じました。
そして、「環境を与える」ということ。
このワークショップに参加する前に、他の講演で同じRCA-IDEの教授の方の話の中で出てきた「小さな部屋に多様な専門メンバーがいると、自然と面白いコミュニケーションが生まれる。」という言葉を実感しました。
今回のワークショップは、プロセスは提示されたものの、思いのほか参加者に任されていたような印象を受けました。
RCA-IDEの教授の方は、それぞれのチームの所にやってきては、ディスカッションや簡単なアドバイスをしてまた他のチームの所へ行くというような感じで、具体的なアドバイスはあまりしないことが多かったです。
これも面白いポイントの1つです。
たぶんイノベーションを起こすための完璧なプロセスや方法論は存在せず、その場に居合わせた人々によってそのやり方は様々なはずです。
イノベーションを起こすために必要なのは、イノベーションが起こるかもしれない最適な環境を作ることなのかもしれません。
それには、多様な人々を集め、彼らが作業をしたりアイディアをだすための素材や環境を用意することが大切です。
環境が整えば、後はその中で動く人々を見守り、あまりにもかけ離れた場合にだけそっと向きを変えるくらいが一番良いのかもしれません。
いろいろな刺激を得た5日間でした。
サンキュー皆様&マージョン!